ここ数日でよしもとばなな(吉本ばなな)を読み漁りました。どの話も―例えば名曲カップリングのさりげない名曲を見つけたようで―ぜいたくなものでした。読んだ順番に書きます。

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よしもとばなな 『ハゴロモ』 新潮文庫、2007年(第7刷)

よしもとばななの本で、初めて一冊一つのお話という本を読んだ。川というのは彼女の小説の中ではどれも非常に意味のあるもののように捉えられていて(『キッチン』に収録されているムーンライト・シャドウもそうですね)、今回のお話もすごく意味の深い、でもその深さが温かいように感じたお話でした。どこかできすぎているような気もするけれど、それでも普段食べているようなものがすごく美味しそうに感じられるのは、とても楽しい。

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吉本ばなな 『うたかた/サンクチュアリ』 新潮文庫、2008年(第7刷)

『キッチン』と同じく、カバーデザインは増子由美さん。このデザインがとても好きです。「うたかた」では、父親の奔放さとさりげないストイックさ、嵐(登場人物の名前です)のクールさと温かさがいいなぁーと思いつつ、「サンクチュアリ」では末尾の夜の散歩の部分にすごく共感。泣く、という行為は涙を流すだけではなくて、どこか気持ちの奥にあるものをもう一度見つめなおすこと、その重さに慣れるための、一種の途中経過なんじゃないだろうかと思います。登場人物それぞれの「泣く」は深い。

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吉本ばなな 『とかげ』 新潮文庫、2006年(第21刷)

短編集。一作目の「新婚さん」はそうか、なるほど、どこかで読んだ気がしたという小説(あとがきを読めば、その理由が分かります)。どのお話も、背後には肌寒いくらいの感情の揺れ動きがあるんだけれど、それが表面に出てくる時に、登場人物それぞれが何とかオブラートにつつんでみたり、時にそれが出てしまったり、短編集である、という以上に、いろいろな温度を感じた本でした。解説の片山洋次郎さんも書いていますが、どこを切っても「吉本ばなな」というのはお決まり。

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吉本ばなな 『白河夜船』 新潮文庫、2006年(第3刷)

今回、集中的に読んだ中で一番印象に残った一冊。特に表題作の「白河夜船」は良かった。ここでは《眠る》という行為がクローズアップされているけれども、どこか分かる気もするし、全然分からない気もする。個人的には、このお話の主人公とハゴロモの主人公は年が近いように思うんだけれど、その二人でも全然違うところへ行くことになる(詳しくは比較してみてね)。「あなた、分かるでしょう?」という時折出る詩的な文章も好きになりました。