はい、6月です。そう言えば、学校のアジサイもきれいに咲いていたような…まもなく梅雨入りでしょうか。(梅雨の話をしたら、お隣の留学生はものすごい嫌な、というか面倒くさそうな顔をしていましたが。)今日はここ最近読んだ本の中から幾つかレビューでも書いてみようかと。

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興梠一郎 『中国激流、13億のゆくえ』 岩波新書、2007年(第9刷)

今、中国政治の理解の足しになればと思って買った一冊。実際に中国で仕事をしてきた筆者が語る、完全ピラミッドをなす中国社会の基層(ないし、組織の土台を形成する人々)のお話。新書の欠点?は参考文献や引用が文芸書や論文と比較すると制限されてしまい、その信憑性を問いたくなってしまうところ。ただ、むしろそうした知的な好奇心を刺激するものとしてはとても良く、詳しい内情は中国政治の専門家の同級生などにも聞いてみたいと思います。

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長尾剛 『話し言葉で読める「西郷南洲翁遺訓」』 PHP文庫、2008年(第2刷)

大学時代の恩師からいただいた本。西郷隆盛のかつての言葉(西郷南洲翁遺訓)を簡単な話し言葉に書き換えたもので、漢字が並んで堅そうなタイトルの割にも案外スラスラと読めるものでした。ここ最近のいわゆる「○○力」ブームにも分類されそうなものです。が、なるほどな、と思う部分も多くあり、今も昔も大事なことは同じだなぁと思うと同時に、あぁやっぱりこれが大事なんだと(もちろん西郷隆盛が大事と思っていたものなんだと)感じるところも多い、良い読み物でした。

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内田樹 『私家版・ユダヤ文化論』 文春新書、2008年(第9刷)

授業の中で、担当の先生が言及されたので読んでみた一冊。ユダヤ人はなぜ迫害されてきたか、誰がユダヤ人なのか、そもそもユダヤ(ないしユダヤ人)という概念は《何》なのか…といったいわゆる「ユダヤ」の問題に、筆者が(私家版として)素朴な疑問をぶつけてみた、という一冊。歴史的な展開から、哲学的な部分、認識論まで話は及び、最後まで、もちろん頭を使いつつも面白く読めました。内田樹さんの他の本にも興味が沸いてきた今日この頃。

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伊坂幸太郎 『アヒルと鴨のコインロッカー』 創元推理文庫、2009年(第19刷)

最後は、全く違うものを一つ。「重力ピエロ」が話題の伊坂作品ですが、こちらもすでに映画化されたもので、印象としては伊坂作品の中では比較的筋がシンプルなように思います。(もちろん、エッシャーのようにはめこまれた「ラッシュ・ライフ」も好きですが。)個人的にはこの面白さは小説だからこそのもののような気がするのですが、これを果たして映画でどう出したのか(もちろん若干の設定変更もあるでしょうが)とても見たいもの。