最近読んだ本をざっとレビューしてみます。

ティム・オブライエン 『本当の戦争の話をしよう』 文春文庫、2007年(第11刷)

翻訳は村上春樹。知る人ぞ知るコクサイの広報誌「エグゼ」に記載されている先生たちのコメントの中で、お薦めの本として挙げられていた一冊。本当の戦争の話には教訓など何もない、そもそも話をしているその話は〈戦争の話〉足り得ない、など、静かながらも非常にインパクトのある言葉が並んでいた。ベトナム戦争での話が淡々と(ただし連作短編として)綴られますが、実際かなり生々しい描写もあり、読んでいて辛かった箇所も多々あった。表紙が実際に戦争中に送られたテレックスというのも非常に「重い」。

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東郷和彦 『歴史と外交―靖国・アジア・東京裁判』 講談社現代新書、2008年

丁寧な文体が印象的な、いわゆる「新書」足るものでした。外交官一筋で生きてきた筆者が何を見、何を感じ、どのように行動してきたか。単純に回顧録に留まることなく、読み手にそれを問いかける。読む人が読むと、内容が浅いと感じるのかも知れませんが、私にとってはちょうどいいくらい、そして有り余る新しい視点や考え方に触れることが出来た一冊でした。大学院での授業でも、非常に重宝した参考文献となったことは言うまでもない。そして、こんな人が大学院の授業してくれたらおもしろいだろうなぁ、と。

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遠藤周作 『沈黙』 新潮文庫、2007年(第44刷)

宗教と言うものを考える際に、それを突き詰めていけば必ず当たるに違いない「神の沈黙」という主題をテーマにした作品。友達が横で話をしていたのに興味を持って読んでみました。殉教とは何か、背教とは何か、日本と西洋の心的な面における差異とは何か。薄い本ながら考えることが多かった。手紙に始まり、記録に終わるという小説としての一連の流れも素晴らしく、あぁこんなものは読んだことがなかった、と感じた一冊でした。今度ハリウッド?で映画化されるとか何とか。かなり見てみたいです。